憧れを胸に、海を越えて

ジュリアナさんが日本で働くことを決めた理由は、とてもシンプルで、力強いものでした。
「日本の文化が好きなんです。食べ物も美味しいし、何よりとても生活しやすいから」
アニメや旅行番組で見た美しい四季、彩り豊かな和食、そして世界トップクラスの安全性。そんな日本での暮らしへの純粋な「好き」という気持ちが、彼を遠くバリ島から広島の地へと導きました。キラキラした憧れを胸に、ジュリアナさんの新しい生活が始まりました。
「怖い」から「楽しい」へ。言葉が繋いだ心の距離
しかし、現実の生活は、想像していたよりも少しだけ大変なものでした。ジュリアナさんは当時の心境を、少し恥ずかしそうに、でも正直に打ち明けてくれます。
「広島に来たばかりの頃は、日本語が全く分からなくて…。周りの人が話していることが、なんだか自分を怒っているように聞こえて、毎日が怖かったんです。『何か悪いことをしてしまったんだろうか』と、いつもビクビクしていました」
皆さんも、海外旅行先などで言葉が通じず、心細い思いをした経験はありませんか?ジュリアナさんが感じていたのは、まさにそんな不安でした。しかし、彼は諦めませんでした。少しずつ言葉を学び、勇気を出して同僚たちに話しかけるようになったのです。
「そしたら、みんな笑顔で、ゆっくり話してくれたんです。怒っていたんじゃなくて、身振り手振りを交えて一生懸命に伝えようとしてくれていただけだったんだって、その時初めて分かりました。今では言葉も理解できて、冗談を言い合ったりするのが本当に楽しい。広島の人は、みんな優しいです」
言葉という橋が架かった時、「怖い場所」は「温かい居場所」に変わりました。彼のその笑顔が、乗り越えてきた道のりを何よりも雄弁に物語っていました。

教える喜び、育てるやりがい

言葉の壁を乗り越えたジュリアナさんは、今では職場に欠かせない頼れる「先輩」です。彼が今、仕事で一番やりがいを感じるのは、どんな時なのでしょうか。
「新しく入ってきた後輩に、僕が仕事を教えるんです。そして、その後輩がちゃんと仕事を覚えてくれた時ですね。できなかったことができるようになった姿を見ると、自分のことのように嬉しいんです」
かつて自分がそうだったように、不安な気持ちでいっぱいの後輩たちに、彼は優しく寄り添います。「時間や仕事の約束、職場のルールを守ることの大切さも、日本の素晴らしい文化として伝えていきたい」と彼は言います。自分が受け取った優しさを、次の世代へと繋いでいく。その責任感と喜びに、彼の大きな成長が感じられます。
心を癒す、満開の桜と故郷の踊り
そんなジュリアナさんには、一年のうちで最も心待ちにしている景色があります。
「尾道の千光寺公園ですね。特に、桜が満開になる季節は最高です」
来日当初、不安な心で見ていた広島の景色。それが今では、彼の心を癒すかけがえのない風景になりました。満開の桜を見上げるたび、彼はこの街で頑張ってきて良かったと、きっと感じているのでしょう。
そして、故郷バリ島の文化も大切にしています。「バリには『ケチャ』という伝統的な踊りがあるんです。『チャッ、チャッ』というリズミカルな男性たちの声だけで物語を表現する、とても幻想的な踊りなので、日本の皆さんにもぜひ知ってほしいですね」と、目を輝かせます。
確かな未来へ。広島で根を張るという夢
最後に、これからの夢について尋ねると、彼は迷いのない、まっすぐな瞳でこう答えてくれました。
「特定技能2号の資格を取りたいです。それは、より高度なスキルを証明して、もっと長く、安定して日本で働き続けるための大切な資格なんです。そして、この大好きな広島で、ずっと暮らしていきたいと思っています」
「怖い」と感じた街は、6年半の月日を経て、彼が人生の根を張りたいと願う「第二の故郷」になりました。言葉の壁を乗り越え、人の温かさに触れ、仕事のやりがいを見つけたジュリアナさん。彼の誠実な挑戦は、これからもこの広島の地で続いていきます。

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