1. 採用の壁:「面接ミスマッチ」を“面接の前”に解消する、逆転の発想

外国人採用において、多くの人事担当者が直面するのが「入職後のミスマッチ」です。限られた面接時間で、言語や文化の異なる相手の適性や意欲を正確に見極めるのは至難の業。アイサービス株式会社の浪花様も、この点に大きな苦労があったと語ります。
「面接で何を、どの順番で確認すべきか。そのポイントを組み立てるのに非常に苦労しました。時間が限られている中で、お互いの認識をすり合わせるのは本当に難しいのです」。
この課題に対し、同社が導き出した答えは「面接前の事前ヒアリング」という一手間でした。
「まず、面接に進んでいただく前に、弊社の業務内容や日本での生活の様子(地域のルールなど)を詳細に説明する場を設けています。その内容を理解し、納得された方のみに、次のステップである面接へ進んでいただくのです」。
これは、単なる選考の効率化ではありません。仕事の大変さや、日本で暮らす上での厳しさも敢えて事前に伝えることで、入職後の「こんなはずじゃなかった」という認識違いを徹底して排除する。この丁寧な「すり合わせ」こそが、ミスマッチによる早期離職や無用なトラブルを防ぐ、最も強力な防波堤になっているのです。
2. 入居後の壁:「何度でも、出来るまで」— 近隣トラブルと向き合う覚悟
無事に採用が決まり、入職。しかし、人事担当者の仕事はそこで終わりません。次に待っているのが、日本での「生活」という、よりデリケートな課題です。
「やはり、地域ルール(ゴミ出し、掃除当番)や生活モラル(騒音、自転車の止め方)の違いから、近隣住民の方からお叱りを受けることはあります」と浪花様は率直に語ります。
こうしたトラブルが発生した際、同社の対応は徹底しています。 「まずは、近隣住民の方へ真摯に謝罪すること。そして、従業員に対しては、なぜそれが問題なのか、どうすべきだったのかを、彼らが本当に理解し、行動できるようになるまで、何度も繰り返し教育を行います」。
「1回言ったから終わり」では、文化や習慣の壁は越えられません。「出来るまでやる」という、この地道で粘り強い向き合い方こそが、彼らが日本社会の一員として受け入れられるための基礎を築いています。

3. 未来の雇用主へ:「部屋を直接見る」ことが、本当の支援に繋がる

最後に、これから外国人従業員の住まいを準備しようとしている企業へ、浪花様から非常に示唆に富んだアドバイスをいただきました。
「ぜひ、従業員の住居を直接確認してください。可能であれば、部屋の中まで入って、使用状況をご自身の目で見ることをお勧めします」
このアドバイスの真意は、監視や管理のためではありません。 「直接部屋の状況を見ることで、彼らが言葉にできない『困っている状況』に気づけるのです」。
例えば、部屋が散らかっているかもしれません。しかし、それは本人がだらしないのではなく、「ゴミの分別の仕方が分からず、捨てられない」のかもしれない。あるいは、支給された家電がうまく使えず、不便な生活を送っているのかもしれない。
言葉の壁や遠慮から「助けて」と言えない従業員の小さなサインを、雇用主側が積極的に察知しに行く。この「直接訪問」という一歩踏み込んだ関与こそが、彼らの孤立を防ぎ、生活トラブルを未然に解決する最大の鍵となるのです。
アイサービス株式会社の実践から学ぶべきは、「採用前の徹底した情報提供」と「入居後の積極的な関与」という、一貫した姿勢です。外国人雇用は、労働力として「採用して終わり」ではありません。彼らが異国の地で安心して働き、生活できる環境を企業側が主体的に整えること。その地道な努力こそが、結果として企業の成長を支える、貴重な人材の定着に繋がっていくのでしょう。
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